光の基本的な性質
私たちにとって身近な存在である「光」。光が持つたくさんのユニークの性質は興味深いものばかりです。
ここでは、よく知られている基本的な性質を通じて、光のふしぎに一歩近づいていきましょう。
光は波であり、粒である
光は「波」と「粒」、両方の性質を持っています。
その波としての性質(波動性)を表すために「波長」という言葉が使われます。波長は、光が1回振動する間に進む距離のことで、ナノメートル(nm。10億分の1メートルのこと)という単位がよく用いられます。私たちの目に見える光は、波長が約400 nmから700 nmの間の光だけで、可視光と呼ばれるものです。それ以外の波長の光には、X線や紫外線、赤外線などがあります。私たちには見えませんが、これらも光の仲間です。
一方、光は「粒」の性質も持っています(光の粒子性)。その粒の数によって光の強さが変わります。明るい光は粒の数が多く、暗い光は粒の数が少ないです。この光の粒のことを「フォトン」や「光子(こうし)」といいます。
オシロスコープという機械で音と光の信号を比較してみると、光の粒子性を確かめることができます。波である音は、その強さ(音の大きさ)を徐々に弱くしていくと信号が小さくなり、ついにはなくなります。それに対して光は、徐々に弱くしていくと、信号の総量は少なくなりますが、まばらなパルス(ごく短時間の信号)として検出でき、その信号ひとつひとつの大きさが小さくなることはありません。このことから、光にはこれ以上小さくできない、「粒」の性質があることがわかるのです。
光は1秒間に30万kmの速さで進む
光の速度は秒速約30万km。なんと1秒間に地球を7周半も回る超高速で進むことができます。この性質は、大量のデータを短時間で伝送する光通信など、さまざまな技術で活用されています。また、このように現在知られている物質の中で最も速いスピードを持つ光でも、たとえば1兆分の1秒(1ピコ秒※)という極めて短い間には、わずか0.3 mmしか進むことができません(真空中)。最近では、このようなものすごく短い時間内におこる光現象の研究が、物理・化学・生物などの新しい分野で必要不可欠になってきています。
※1ミリ秒=1000分の1秒、1マイクロ秒=100万分の1秒、1ナノ秒=10億分の1秒、1ピコ秒=1兆分の1秒。
光と物質の関係
光は宇宙空間のように物質のない真空中ではまっすぐに進みますが、水や空気、その他の物質に当たると、「吸収」「透過」「反射」「散乱」といった、さまざまなふるまいを見せます。まず、光が物質に当たると、その一部分は物質中に入り込んで「吸収」され(a)、熱エネルギーに変わります。もしぶつかった相手が透明な物質の場合は、内部で吸収されなかった光の成分が「透過」 して(b)、再び物質の外側に出てきます。また、物質の表面が鏡のように滑らかな場合は「反射」 が起こりますが(b)、表面が凸凹の場合は、「散乱」されます(c)。
私たちの目は、この「透過」あるいは「反射」「散乱」してきた光によって、あらゆるものの色や形を見ているのです。
光は「反射」する
遠くの山が、湖や池の水面にくっきりと映るのはなぜでしょうか?
山に当たった日の光は様々な方向に跳ね返されています。これを反射光と呼びます。私たちの目は、山からの反射光のうち私たちの目に直接届く光をとらえ、 目のレンズで網膜の上に像を作ることにより、山の姿を見ています(図のピンク色の線。図では、分かりやすくするために山ではなく子どもが離れたところにある木を見ている絵にしています)。
私たちの目と山との間に湖や池があると、山からそこへ向かった光は水面で反射します(図の水色の線)。もし水面が、風のない穏やかな状態で、鏡やガラスのように凸凹のない平らな面であったとき、光の入ってきた角度(入射角)と跳ね返って出ていく角度(反射角)が等しくなります。これを鏡面反射と言います。水面で鏡面反射した光が私たちの目に届く、ちょうど良い場所に水面があるとき、私たちは水面にきれいに映った山の姿を見ることができます。
もしも、水面が波立っていて凸凹のある状態であった場合には、光の反射する向きが水面の場所によってかわってしまい、水面には乱れた山の姿が映ることになります。
光は「散乱」する
晴れた日の昼間、空の色は青く、夕方になると赤く見えるのはどうしてでしょう?
太陽から出た光が宇宙空間を通って地球に届くと、大気中のさまざまな粒子や分子に当たり、「散乱」します。一部は宇宙空間に戻っていき、残りは大気の中を進んで地表に届きます。このとき、光は、波長によって散乱されやすさが違い、私たちの目に見える光のうち青い光ほど強く散乱されます。日中の空が青く見えるのは、そのためです。
一方、日没のころの夕焼けや、日の出のころの朝焼けでは、空はオレンジ色やピンク色、赤色に見えます。これは、太陽の位置が低いところにあるとき、光が大気の中を通ってくる距離が長くなるので、散乱されやすい青い光は途中で散乱されて弱くなってしまい、赤やオレンジの光が残って、私たちの目に届くからです。
光は「屈折」する
コップの中に入れたストローをのぞきこむと、水に入っている部分からストローが曲がって見えるのはどうしてでしょうか?
コップの中の水と空気の境目では、光が「屈折」しています。屈折は、空気中と水中では光の進むスピードが違うことで起こります。私たちの目は水の中のストローで散乱した光をとらえますが、水の中から空気中にその光が出るときにも、屈折が起こります。しかし、私たちの目には、水中からの光がまっすぐに進んできていると見えるため、屈折して目に入ってくる光の延長線上に「にせの像(虚像)」を描きます。その結果、実際にある位置よりも水の中のストローの先端がずれて見えるのです。
光は「干渉」する
シャボン玉のふしぎな色はどうやってできているのでしょうか?
光はありとあらゆる方向に進んでいますから、光の波どうしは常にぶつかっています。光の波と波がぶつかるときに起こる現象を「干渉」と言います。
波の山と山がちょうど重なったときには、山はさらに大きくなります。波の山と谷がぶつかったときには、波はお互いに打ち消しあいます。この干渉によって、シャボン玉はいろいろな色に見えているのです。
シャボン玉はとても薄い膜でできていて、膜の外側と内側で反射した光どうしが干渉し合って色がついて見えます。さらに、シャボン玉の膜で起きている光の干渉は、シャボン玉が絶えず動いていることで見える角度が変わります。
このようにして光の波と波は強めあったり打ち消しあったりを繰り返しているので、私たちの目には常に変化するふしぎな色となって見えているのです。
光は「分散」する
雨上がりの空に虹が見えるのはどうしてでしょう?
太陽から届く光は、白色光線といって、実はさまざまな色が混ざって白く見えている光です。そこでプリズムを使って白色光線をわけると、混ざっていたさまざまな色の光が見えるようになります。これを光の「分散」と言います。
自然界でも、雨上がりなど空気中に水滴が残っていると、それがプリズムの働きをすることがあります。水滴に当たった光は、屈折して水滴の内部に進み、水滴中で反射して、再び水滴の外に出るときに屈折して出ていきます。
このように、空気中の水滴が、ちょうどプリズムと同じような「分散」を生じさせるため、帯状に連続してさまざまな色の光が私たちの目に届くようになります。それが虹なのです。
また、虹の周辺を注意深く見てみると、その外側には、もう1本、色の順番が反転した虹(副虹)が見えることがあります。この副虹は、水滴中を2回反射した光が、人間の目に届くことで現れています。