新しい光

新しい光

最新の研究を通じて、これまで知られていなかった光の新たな特性やふるまいがわかってきました。
光の新しい応用方法が実現すれば、私たちの未来の暮らしも大きく変わるかもしれません。
注目の「新しい光」を紹介します。

光のしずく

穴の周りに残る、飛ばない光

光は小さな穴も通り抜けられます。この穴をどんどん小さくしていくとどうなるでしょう? 実は、光はある大きさより小さな穴を通り抜けることができません。この大きさは光の波長(色)で決まっています。このとき、穴の周りを良く調べてみましょう。光が少しだけしみだしていることがわかります。そして、この光は飛んでいくことがありません。このように、飛んでいかない光があるのです。まるで、水道の蛇口にくっついているしずくのような光です。このような光を「近接場光」と呼びます。近接場光を使うと、普通の光では見られない大きさのものを観測したり、DVDやブルーレイディスクにものすごい数の映像を録画したりすることができるようになります。

近接場光

光の色

大きさと形で、色が変わる

たとえばステンドグラスの赤色は、何から生み出されているかご存じですか。その答えは「金」です。しかし金が発する色は、金塊のように、まさに金色のはず。それではなぜステンドグラスは赤くなるのでしょうか?
実は、ステンドグラスの中の金は、とても小さな粒として混ぜられています。その大きさは、1 mmの10万分の1くらいです。このように、物の大きさや形を変えることで、さまざまな色を作り出すことができます。
色は光と物の反応によって決まります。同じ物でも、大きさと形が変わることで、光は全く違った反応をするのです。

ステンドグラスに使われた金は「赤色」に見える
ステンドグラスに使われた金は「赤色」に見える
金塊が発するのは「金色」
金塊が発するのは「金色」

光の結晶(フォトニック結晶)

ホントは何色? 見る角度で変わる、ふしぎな色

物の色は色素によって決まっていますが、フォトニック結晶と呼ばれる構造では、物の大きさや形を変えることによって色が決まります。このような色を「構造色」と呼びます。写真のような「人工オパール」や「人工タマムシ」は、光の波長(色)程度(1 mmの千分の1以下)の繰り返し構造を持つフォトニック結晶によって作られています。フォトニック結晶は、色を変えることだけでなく、光や原子を閉じ込めたり、ドーナツ状のレーザビームを作り出すことのできる材料として、さまざまな光デバイスヘの応用が期待されています。

人工タマムシ
人工タマムシ
人工オパール
人工オパール

メタマテリアル(透明マント)

光を曲げると“透明人間”になれる!?

フォトニック結晶と同じように、構造によって光を自由に操ることができる物質がメタマテリアルです。メタマテリアルは金属などの小さな構造から作られていて、光の反射・屈折などを、普通の世界の常識を超えて操ることのできる自然には存在しない人工の物質です。メタマテリアルを使うと、アニメや映画でおなじみの透明マントを作ることができるかもしれません。透明にしたい物をメタマテリアルで包み、物の後ろからの光を曲げることにより、包まれた物は透明に見えるようになります。

テレビのリモコン
メタマテリアル(透明マント)

光ピンセット

光で物体をつまむ

SF映画で、物を引き寄せる光線を見たことがあると思います。光の世界では、このような技術は、「光ピンセット」として使われています。顕微鏡の中でレーザビームを集光して小さな物に当てると、「光に押される力」と「強い光の方に引かれる力」が働き、2つの力がつり合ったところに物をつかまえることができます。このように、直接さわらずに物を動かすことができるので、生物学や医療、化学などへの応用が広がっています。

テレビのリモコン
光で物をつまむ
テレビのリモコン
光ピンセット

ねじれた光

光のうずまきで物体をまわす

普通の光の波は平面波と呼ばれていて、海の波のように進んでいます。一方、波の形がねじれてうずまき状になっている、ラゲールガウスビームと呼ばれる光があります。この光は壁に映すとドーナツのような形をしています。そして、エネルギーの流れもうずまき状になっているので、この光を当てると、小さなものをまわすことができます。物にさわらず、物をまわすことのできるこの技術は、光トルクレンチと呼ばれています。

テレビのリモコン
ふつうの光の波(平面波)
テレビのリモコン
ねじれた光の波(ラゲールガウスビーム)
テレビのリモコン
光トルクレンチ
〈監修〉
大竹先生