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光のすがた

光のすがた

「赤い光、青い光、黄色い光…」、「明るい光、暗い光」、「太陽の光、ホタルの光、蛍光灯の光…」
このように、光を説明することばはいろいろあります。
光の色や見えない光については、光の「波長」が、光の「明るさ」は、「フォトン(光子)」の数が関係しています。
そして、光は太陽から出ているだけでなく、生物の体からも出ていたり、照明器具から出てくる光もありますね。
さまざまな光のすがたを、詳しく見ていきましょう。

光の色と波長

光を波(電磁波)として見ると、波の山と山、あるいは谷と谷の間の長さである波長が、光の色を決めています。人間の眼が感じることのできる光は可視光と呼ばれ、400ナノメートルから700ナノメートルの波長範囲に相当します。ナノメートル(nm)は10億分の1メートルのことで、微小な長さの単位として マイクロメートル(μm、100万分の1メートル)と共によく使われます。可視光よりも長波長(波の間隔が長い)側には、赤外線やテラヘルツ波、電波と呼ばれる電磁波の領域があります。一方、可視光よりも短波長側には、紫外線の他にX線やガンマ線が存在しています。

電磁波とは、進行方向 と直交し、互いに直行する方向に振動する電場と磁場の波です。光は粒であり、波である二重性を持っていますが、そのうち「波」の特性に注目したのが電磁波といっていいでしょう。ですから、電磁波を量子力学的に見れば、フォトン(光子)そのものです。 電場(磁場)が1周期の振動をする間に電磁波が進む距離を波長と呼びます。光(電磁波)は1秒間に真空中を30万km進むことから、1周期が100兆分の1秒である電磁波は、波長3 μmの赤外線になります。

光は電磁波

可視光

虹の七色は可視光線

可視光は、およそ400 nm 〜 700 nmの波長範囲の光であり、この範囲の光を人間の眼は感じることができます。可視光を色で表すと、400 nm近辺の紫から長波長側へ、藍、青、緑、黄、橙、そして700 nm近辺の赤、となり、人間の眼は波長555 nmの緑色の光を最も強く感じます。

太陽光に照らされた植物の葉が緑色に見える理由は、葉に含まれる物質が青や赤の光を吸収し、緑色の光だけが反射して、私たちの眼に届くからです。

人間の目に緑の葉が見えるしくみ
人間の目に緑の葉が見えるしくみ

赤外線

熱あるところに赤外線あり

赤外線は、700 nm 〜 1 mmにおよぶ広い波長範囲の光(電磁波)であり、おおよそ次のように区分されます。

  • 近赤外線:700 nm 〜 2.5 μm
  • 中赤外線:2.5 μm 〜 4 μm
  • 遠赤外線:4 μm 〜 1000 μm (1 mm)

可視光に近い近赤外線は、身近なところでは、AV機器や家電品のリモコン、携帯端末間の通信等に使用されています。

また、赤外線は熱源(熱を持ったもの)なら、どんなものからも放出されます。たとえば体温が37℃程度である人間の体なら、波長10 μm近辺の遠赤外線が常に放出されています。耳式体温計やサーモグラフィは、この赤外線放射を測ることで、体温を測定することができるのです。

テレビのリモコン
テレビのリモコン

紫外線

紫外線は鳥や昆虫たちには見えている

可視光線から波長の短い方に外れた紫外線は、人間の目には見えませんが、鳥や昆虫は見ることができます。右の写真のように、人間の目には模様がないように見える花びらでも、紫外線を見ることのできる昆虫の目には、中心部に濃い模様が見えています。これにより昆虫は、蜜のある場所を見つけて飛んでくることができると考えられています。
昆虫の目が見ている花
昆虫の目が見ている花
人間の目が見ている花
人間の目が見ている花

X線

さまざまなものを通り抜ける光

加速した電子が物質と衝突して急激に減速したり、磁場中で運動の方向を変えたりすると、0.01 nm 〜 10 nmの波長の電磁波であるX線が放出されます。また、原子の内側の軌道にある電子に空席ができて、そこへ外側の軌道から電子が遷移してくることによってもX線が発生します。

波長0.01 nm程度のX線は、物を通り抜ける力が強いため、体の内部を透視する医療用のレントゲン撮影、工場での品質検査等に利用されています。

食品の異物検査
食品の異物検査
歯科用X線
歯科用X線

ガンマ線

高エネルギーで物質に作用する光

ガンマ線は、励起状態にある原子核から放出される高エネルギーの電磁波です。ガンマ線光子の持つエネルギーは、可視光の光子の持つエネルギーの1万〜100万倍以上になります。ガンマ線が物質中に入射すると、高速の電子が発生し、周りの物質へ作用します。その作用を利用して、滅菌やがんの放射線治療などに用いられています。
放射線治療
放射線治療
光で病気がわかる!? ~国際周期表年2019にちなんで 「F(フッ素)」のお話~
植物と光

太陽の陽射しをたっぷり浴びて、すくすくと育つ植物。植物の生育には光が欠かせません。しかし私たちに食事の好みがあるように、植物にも「好みの光」があります。植物の大好物は青、赤、近赤外の光で、これらの波長にとくに高い感度を持っています。

植物は、ただ光を光合成のエネルギー源として利用するだけではありません。この光のバランスによって環境認識を行っています。光の波長のバランスから1日の夜明けから日没までの長さ(日周)を、さらに照射光量によって季節の移り変わりを検知し、形態形成(開花や紅葉、実のなる時期など)を決定しているのです。たとえば農作物の味が夕焼けと関係していることが知られていますが、植物の敏感に光を感じ取る機能によって、うま味成分が変化しているようです。このように植物は、外観や味・においによって、私たちに季節を提供してくれています。

植物工場で赤色LD(レーザダイオード)を照射して稲を生育する実験

光の明るさ

このように、光の波長が変わると、私たちの目には青く見えたり赤く見えたり、「色」の違いとなって感じられます。それでは、明るい光や暗い光の場合、私たちの目は何の違いを感じているのでしょうか。光の一番小さい姿である「フォトン(光子)」が、そのカギを握っています。

光の明るさを表す単位には、照度やパワー密度(W/m2)等がありますが、ここでは、フォトンの個数に基づいて光の明るさを表してみます。フォトンとは、光の粒子のことであり、波長によって定まるエネルギーを持っていて、光を暗くしていくと、しだいにその姿が現れてきます。

晴天時の太陽光の明るさは、可視光のパワー密度として約400 W/m2です。これを、フォトンの個数で表すと、およそ1,000,000,000,000,000 フォトン/秒/mm2、すなわち、毎秒1平方mmあたりに1000兆個のフォトンが地上に届いていることになります。また、満月の明るさは太陽の100万分の1程 度、0等星の明るさ満月の10万分の1程度です。ホタルの光やオワンクラゲ等の生物からの発光も月明かりや星明かり程度の明るさです。

1秒間に1 mm2あたりに降り注ぐフォトンの数

光の偏光

色や明るさの他にも、光の性質を表すことばがあります。それが「偏光」です。
光は、進行方向に対して垂直に振動しているよこ波です。自然光では、360°あらゆる方向に振動しています(図のオレンジの矢印で振動の方向を示しています)。それに対して、光が一つの方向にだけ振動している状態を偏光といい、私たちはさまざまなところで偏光を大いに活用しています。

偏光はどのようにして利用されるのでしょうか? 自然光の中から、一つの方向の光だけを取り出すためには、偏光板という特殊な板を使います。下の図のようにたて向きに偏光板を置くと、上下方向に振動している光だけが偏光板を通過します(たて偏光)。

ここで、2枚目の偏光板の向きを水平方向にすると、たて偏光は2枚目の偏光板を通過することができずに、ここを通過する光はなくなります(そのため、偏光板2枚が重なったところが真っ黒になります)
偏光板
偏光は身の回りのいろいろなところで使われています。

たとえば、魚釣りなどで使用される偏光サングラスは、このしくみを利用しています。水面で発生する反射光(ほとんどは水面に平行に振動している)をカットして、水中から届く光の邪魔(太陽のギラギラした反射)を減らしているので、水中にいる魚の様子をよく見ることができるのです。

また、テレビやスマホの液晶モニタでは、偏光フィルタで赤・緑・青の光の量を調節して、さまざまな色を作っています。
偏光サングラスの仕組み

偏光サングラス

水面で発生する反射光をカットして、水中の魚を見やすくしています。

テレビやスマホの液晶モニタ

偏光フィルタで赤・緑・青の光の量を調節して、さまざまな色を作っています。

3Dメガネ

左右で偏光の違う絵をそれぞれ見ることで、写真や絵が立体的に見えるようにしています。

生物が発する光 -生物発光-

光は太陽から来るだけではありません。自然界には、ホタルやオワンクラゲが発する光のように、生物の体の中で作られる光もあります。生物が発光する理由としては、

  • エサとなる生物を集める
  • 敵をビックリさせる
  • 仲間とのコミュニケーション

等が考えられています。生物が発する光は、生物の体内で起きる化学反応によって作られます。ホタルの体内にはルシフェリンという発光物質があり、これが酸素と反応して、エネルギーをたくさん持った状態(元気な状態)へと変わり、余ったエネルギーは光として体の外へと放たれます。

オワンクラゲ
オワンクラゲ
(写真提供:鶴岡市立加茂水族館)
ホタル
ホタル
〈監修〉
大須賀先生
〈監修〉
高本先生